僕の夏休み vol.1

今週のお題「自由研究」


じーーーじっじ


たけふみ「あっちぃ」


お盆休み。

僕は両親と共に田舎の祖父の家に遊びに来ていた。

そこで僕は今年最大のミッションを片付ける事にした。


自由研究。小学生の宿敵だ。

しかし、何をするかはもう決めている。


タイトル : 昔の夏を体験する


…という建前でアイスを頬張る自分の写真と感想文で乗り切ろうとしていた。


エアコンは無し。白いタンクトップに黄土色の短パン、麦わら帽子にアイスキャンデー。おまけに首振り扇風機で夏を堪能する。


きっと科学の発展への感謝と敬意でA3用紙はすぐにいっぱいになるだろう。


舐め腐った考えで真剣に取り組む。

やり始めたことを少し後悔し始めているが、一日で1ヶ月分の重荷を下ろせると思えば頑張れる。

温暖化の今、冷房なしのこの環境は当時よりも過酷なものかもしれないが。


まあいい。早く終われ。


そろそろ、固定概念で固められた「昔の夏」に馴染んできた事だろう。

さっさと写真を撮って終わらせるか。


た「じーちゃーーーーん!写真撮ってー!!」


じいちゃん「おおーーーーう、ちょっとまっと

                      れー!!」


しばらくして、スマホ片手に現れたじいちゃんはスイカとうちわを持っていた。


じ「これも置いとけ。それっぽいだろ。」


た「おお!じいちゃん天才!!さんきゅー!」


こんなテキトーな自由研究に文句言わず付き合ってくれる、優しいじいちゃんだ。


じ「撮るぞー、ばっちりきめろ!はい、ちー

       ず。」


カシャッ


汗がきらめく渾身の笑顔。

夏だねえと言いたくなる1枚。


じ「いい写真じゃないか。 LINEで送っておく

       からな。じゃあ、あっちの部屋でスイカ

       食べよう。それ、持ってこい。」


今渡されたスイカを持ち、冷房の効いた部屋へ移動する。


ふぅーっっ。

頑張った。えらいぞおれ。


達成感を味わいながら甘いスイカを頬張った。


よし、写真どんなになったかな。


確認するためにじいちゃんとのLINEを開く。


画像をタップすると、、


ヒヤッ


え?今一瞬寒かったような…

気のせいか。


もう一度写真に目を落とす。



にかっ!!!!!



!?!?!?


誰だこれ。

そこには満面の笑みの自分と、自分の肩に抱きつき同じく満面の笑みの少女が写っていた。


じ「どうだ、よく撮れてるだろう。」


た「え、う、うん!!夏っぽくていい写真だ

       ね。ありがとう。俺、上で自由研究完成さ

       せてくるね!」


じ「おーう、がんばれな。」


スマホを抱えてドタバタと2Fへ上がる。

階段を上がって正面の部屋が昔の父ちゃんの部屋。最近はじいちゃん家に遊びに来た時の俺の部屋になっている。


ガチャッバン!


扉をしっかり閉めたのを確認し、恐る恐るスマホをもう一度見る。


やっぱり、そこには涼し気な白いワンピースを着た見知らぬ少女が写っている。


……かわいい子だな。

っておい!!呑気か!!


じいちゃんには見えてなかったのか?


ぐるぐる色んな事を考えながら写真を見ていると首筋がヒヤッとした。


ビクっ

 恐る恐る後ろを見る。誰もいない。

けどまさか、ユーレイ的なあれ?もしかして。


画面をもう一度みる。


あれ!?

さっきまで写っていた少女が居なくなった。


ゾッ


怖っ!まじか!

ガチのやつじゃん…



???「わっ!」


た「うぁぁぁぁああああああああ」


心臓は胸を突き破る勢いで跳ね上がり、その衝撃で俺はいすごとひっくり返った。


そこには、あの写真の少女がいた。


た「だ、だだだだだれ???」


漫画のようなキョドりを見せてしまう。

いや、誰だってこうなるだろう。


???「あははー!びっくりした?

              いつも遊びに来るたけふみくんだよ

               ね?ずっとお話がしたかったんだけど

               緊張しちゃって…   

               やっときっかけが出来たから頑張っ

               ちゃった♪」


頑張っちゃった♪…じゃねーよ!!

俺の縮んだ寿命返せ!ってかユーレイ??

お化けなのか???なんで俺の名前知ってる????


浮かぶ言葉はひとつも声にならない。

パクパクと酸欠の魚のように口が動くだけ。


???「実はね、たけふみくんにお願いがある

              の!」


俺が声を発する準備ができる前に、

彼女は話を進め始めた。