僕の夏休み vol.2

今週のお題「自由研究」


???「好きなお菓子を持ってついてきて!」


彼女は笑顔で言う。


た「…は?ちょっとまってよ。君の名前は?


やっと裏返り気味の情けない声が出た。

少し攻撃的な言い方になってしまった。

けど、当然の疑問その1だ。


ユイ「ああ、私はユイ!よろしくね。

           さあ、行こ!


明るく前向きな声に、さらに混乱する。

幽霊ってこんなだっけ?

グイッと引っ張られ、彼女に触った感じがあるのに驚きながらもペースを飲み込まれてしまった。


た「わ、わかったから!引っ張るな!」


階段を降りてじーちゃんの部屋に行く。

老眼鏡を掛けて父ちゃんと将棋を指しているところだった。


た「じーちゃん!お菓子ある?」


じ「あるぞ。冷蔵庫にお前が気に入ってたカン  

       トリーマアムが入ってる。好きなだけ食べ     

       な。」


…神かよ。


た「ありがとう!俺、ちょっと外で遊んでくる

       ね。」


じ「おおう。気をつけてな。」


父「あんまり遅くなるなよ。」


バタバタと台所へ向かう。

じーちゃんも父ちゃんも隣のこいつの事、なんにも言わなかった。

やっぱり見えていないんだろうか。


ユイ「カントリーマアムってなに?」


た「え、知らないの?クッキー?みたいな美味

       しいやつ。食べてみな。」


冷蔵庫から取り出した好物をひとつ渡す。

1番好きなココア味。ひえひえで普段より少し歯ごたえのあるそれを彼女はぱくっと1口で頬張った。


ユイ「ん、んまぁ〜〜〜〜〜〜///」


彼女は両方のほっぺたに手を当て、

その場に寝転び足をバタバタ大喜び。


た「ふっ。そんなに?笑」


プレゼントした好物をこうも全身で喜ばれると、こっちまでなんだか嬉しくなる。


…………………あれ?


ぴょこっ

ふぁっさぁ


喜ぶ彼女に、人にはないものが現れた。

頭に可愛らしい2つの耳。

お尻にはふさふさ黄金の尻尾。


た「!?!?!!??お前……!!」


ユイ「あはー!バレちゃった?」


そう、彼女は人に化けた狐だったのだ。

写真もまやかしだったのか。

とりあえず、ユーレイじゃなかった事に少しほっとした自分がいる。

狐だとしても十分超常現象だけど。


ユイ「よし!お菓子も持ったし、出発だ!

           会ってほしい子がいるんだ。 」


化かされていた事は悔しいが、悪意を持って俺に近づいたわけじゃ無さそうだ。


まだ分からない事だらけだけど、彼女の言う通りついて行ってみることにした。